契約を結んだ後、相手が契約を履行しなかった場合、契約の履行を強制することや、契約を解除すること、損害賠償の請求をすることができる。
しかし、それで十分かどうかについては、よく考える必要がある。
1.契約を破られた場合
相手が契約に違反した場合、相手がなすべき債務を履行しないということで、契約の履行を強制したり、損害賠償請求ができるのが原則だ。
しかし、契約の履行については、売買であれば相手が物を調達できないという原因であれば、履行を強制することは事実上不可能だ。
また、損害賠償請求ができても得られるのは金銭のみで、契約が履行された場合と同じになるわけではない。例えば、商品の購入の契約が履行されなかった場合、予定していた転売先への信頼を失ったとしても、それが元に戻るということは法律上の問題ではない。
損害賠償金が得られるとしても、その範囲も限定されている。例えば、相手が個人情報を流出したとしても、自社の社員が対応に要した人件費は請求することが難しいほか、立証するのが困難な風評被害についても請求が難しい。
2.履行する能力の確認
そこで、契約相手が契約を履行する能力があるかどうか、予め十分に確認することにより、リスクを下げることが必要になってくる。
例えば、金銭債権を請求するのであれば、与信管理を行い、経済的な信用力があるかどうかを確認する。物の納品であれば、調達できるかどうかを確認する。個人情報を提供する場合には、保護のための安全管理措置がとられているかどうかを確認する。
よく、経営の3要素として「ヒト・モノ・カネ」といいますが、人員、物資、資力という3つの角度から確認しよう。
3.まとめ
相手が契約を履行することができなかった場合、得られるのは金銭のみで、契約が履行された場合と同じになるわけではない。得られる損害賠償の範囲も、完全に同じ状態にするほどの賠償が得られるわけではない。
契約を結ぶときには、相手が契約を履行することができるかどうか、予め十分に確認する必要がある。