契約書を修正・変更する必要が生じた場合、契約書に手書きで書き加えるか、別途契約書を締結すべきか、望ましい方法は異なる。
どのような対応をすべきか。ポイントを説明する。
1.手書きによる修正でもよい場面
(1)契約書を締結しようとして、製本済みの契約書を先方へもっていったところ、契約条件の変更を求められ、その場で変更を受け入れる場合
(2)契約書を締結した後、明らかな形式上の間違い(甲と乙を間違える等)があった場合
これらの場合、いったん既存の契約書を破棄して新しい契約書を結びなおす方法も考えられるが、契約書を修正する方法が簡便だ。
2.修正の仕方
修正の仕方については、次の2通りがある。
(1)二重線を引き、双方が押印したうえで、その横に手書きで正しい文字を入れる。
(2)二重線を引き、その横に手書きで正しい文字を入れたうえで、欄外に「加入○字、削除○字」と記載し、各当事者がそこに押印する。
小さな訂正であれば(1)の方法を、文字数の大きな修正であれば(2)の方法をとる。句読点は文字数に含める。文字数は漢数字で記入したほうがよい。
修正が多岐にわたる場合には、別途覚書を締結して修正内容を記載した方が確実だ(その際には、新旧の表現を明記し、修正個所が分かりやすいようにする)。
3.手書きによる修正をすべきでない場合
契約書を締結した後、その後の合意で契約条件が変更になった場合には、上記の契約書の修正ではなく、別途変更のための契約書を覚書等により締結すべきだ。
契約書の修正は、当初の合意内容を明らかにする趣旨で行うべきで、事後的な合意を修正で行ってしまうと、その事後的な合意がいつ行われたのか問題となることがある。また、当初の合意と見分けがつかなくなるという問題が生じる。
4.捨印について
捨印とは、契約書の修正に備えて、予め上記2(2)の訂正をするために欄外にハンコを押すことをいう。
定型的な申込書(自動振替の申込書等)で相手が十分信用できる場合について、記載ミスに備えて捨印をすることはあるが、通常の契約書で捨印をするのは通常ありえない。
お互いに合意した内容を超えて修正されたとしても、その修正は無効だと主張する余地はあるが、契約締結経緯を詳細に立証する必要が生じ、契約内容についてリスクを負うだけなため、捨印はすべきではない。
5.まとめ
契約書の修正は、締結前や誤記について行い、締結後の内容変更は別途契約書を締結する。契約書の修正を予め認める捨印についてはすべきではない。