契約書の内容を決める際に相手と合意がつかない場合がある。
その場合、どのような点を考え、どのように交渉していけばいいのだろうか。
1.契約交渉の外部環境の留意
契約書について議論をする段階というのは、通常はお互いの大まかな合意はできていて、細部の条件について詰めるということが多い。
しかし、細部の条件が利害関係上決定的に重要な要因となることも多く、交渉打ち切りになる可能性も考えた交渉となることがある。
その場合、どのような点を考えていくべきだろうか。まずは、ビジネス上どのような関係にあるか、つまり、代わりの相手はすぐに見つかるか、相手と取引を深めて別の取引について関係を深めていくか等を見極めながら、契約書について相手と交渉していく必要がある。
単純な例でいうと、こちらが商品を購入する側で、保証期間について1年か3年かでもめた場合には、同価格で同じ商品を3年の保証期間で購入することができる立場にあれば、強気の交渉ができる。しかし、他に同条件で調達することが困難であれば、相手の言い分をある程度飲まざるを得ない。
2.契約書の表現についての交渉は避ける
契約書案を提出したところ、相手からこのように修正した方がよいと返事があり、その内容を更に修正して、と延々と交渉が続くことがある。これは不毛な交渉だ。先に客観的な契約条件を決める必要があり、契約書の表現はそれを表出したものに過ぎないからだ。
まずはお互いの合意内容を契約書の表現とは別にして明確に合意し、契約書はその後に合意内容に沿って記載すべきだ。
契約の表現について修正し続けていると、最終的には、双方とも有利に解釈する余地のあるようなあいまいな表現になることもある。このような表現は、トラブルを生むだけとなる。
3.相手が書式にこだわっている場合の対応
契約相手が、取引についてはこの契約でないと一切認めない社内の運用になっていると言われた場合でも、必ずしもあきらめる必要はない。いったんその契約書で結ぶ前提で、同時に変更のための覚書が締結できないか交渉してみよう。
4.契約書の解釈の証拠化
適用されるか不明確な契約書の文言があったため、明確にするよう要求したというケースを考えてみよう。その際に、相手が応じれば問題ないが、相手が応じずに、「その場合には適用される」といいつつ、契約書の文言の修正を拒むことがある。その場合、契約書の文言からは適用されるか曖昧なままとなってしまう。
対策としては、契約締結権限を有すると考えられる一定の役職者(支店長、部長等)に対してメールで質問をし、メールで回答を得ておけば、問題が起きた場合の有力な証拠となる。口頭でしか回答が得られない場合には、議事録を作成して先方に送付しておくすることも考えられる。
5.「協議する」条項を使うという考え方について
契約条項についてどうしてもまとまらない場合には、問題となる事態が生じた場合には「甲乙協議する」と書いてしまうこともある。
しかし、これだけでは何も合意したことにはならず、協議が整わない場合、法的には協議に応じる義務しか残らない。数回協議すれば、十分義務は果たされたことになるだろう。結果としてどちらかに有利な契約内容となってしまうので、注意が必要だ。
6.まとめ
相手と契約内容について合意できない場合には、外部環境を考慮したうえで契約締結についての交渉を行う。契約内容を交渉する場合には、契約書の表現にこだわるのではなく、客観的な契約条件を決めるというスタンスで臨もう。
相手が自社の書式にこだわっている場合には、別途覚書を締結するという手段もある。曖昧な契約条項で相手が修正に応じない場合、契約書の解釈方法について相手型責任者のコメントを記録に残すという方法がある。「協議する」条項は法的な意味は少ない。