A、Bの共同不法行為によって1000万円の損害を受けた場合、相手方に対して損害賠償請求をすることができる。この場合、民法719条により、AとBは連帯して支払う義務を負う(免除等の効力について絶対効がない、不真正連帯債務となる)。
この場合に、訴訟を提起したとして、自己の過失により過失相殺があった場合、AとBの過失の内容によって、それぞれ過失相殺の割合が変わってくる可能性がある。例えば、Aに対しては8割、Bに対しては5割認められるということになる可能性がある。
そして、当事者の資力が乏しい場合、AとBどちらから回収するかによって、実質的な回収額がかわってくることがある。以下解説したい。
1.どちらから先に回収すべきか
上記の例で、Aは500万円支払う資力があり、Bは同様に500万円支払う資力がある状態であったとする。
(1)Aから先に500万円を回収した場合
返済の効力はBに対しても及ぶ。つまり、Bは本来責任を負う1000万円の5割である500万円について返済をしたのと同様の立場になる。従って、Bはこれ以上支払う必要がなくなってしまう。Aに対しては300万円の債権が残るが、もう支払う余力がない。結論として、回収額は500万円に留まる。
(2)Bから先に500万円を回収した場合
Bから500万円回収しても、Aの過失割合は8割なため、Aに500万円の返済の効力が及んだとしても、Aに対して残り300万円を請求することができる。結論として、合計800万円回収することができる。
このように、回収する順序によって、回収できる金額が大きく変わってくることがある。判決前に支払いを受けたとしても同様の問題が生じる点も要注意だ。
2.実務的な対応
AかBのどちらかについて過失相殺が認められる可能性があり、かつAかBのどちらかについて資力が十分でない場合には、上記のような問題が発生する可能性がある。
その場合には、相手から支払いの申し出があったとしても、安易に支払いを受けることはせず、以後の利息を免除する代わりに何らかの担保物を取得する等の対応を取ることが考えられる。
3.まとめ
共同不法行為により被害を受けた場合で、過失相殺が認められる可能性があり、相手の資力が十分でない場合には、相手から安易に回収をするべきではない。