商品を仕入れる際、問題ないかどうかのチェックは買主、売主のどちらに責任があるのか。チェックについて契約書に定めるとしたら、どのようなことを記載すればよいのか、
ポイントをまとめた。
1.契約書に検査条件を定める必要性
(1)商人間の売買契約の場合
株式会社等の商人間での売買では、特約がない場合、買主がその目的物を受領したときは遅滞なくその検査をしなければならない。
もし目的物に瑕疵があったり数量に不足があることを発見したときは直ちに売主に対して通知を発しなければ、瑕疵または数量不足による契約解除、代金減額、損害賠償の請求をすることができないとされている(商法526条1項、2項)。
つまり、検査をしない場合、商品に瑕疵があった場合の責任を追及することができないのが原則となる。買い手にとっては、商法の規定がそのまま適用されてしまうと、検査を十分に行う必要が出てくる。
保証期間を別途定めたとしても、検査義務を履行することは責任追及の前提要件となるため、検査義務の重要性は否定されない。
すなわち、買主としては、何をすれば検査についての義務を果たしたことになるのか、契約書に明確に記載をすることが重要となる。取引基本契約書に定める場合において、多種多様な取引が想定される場合には、「買主が定める検査内容に従う」と記載し、買主の裁量を明らかにすることも一つの対策になる。
尚、契約書に検査義務を排除する定めがあれば、このような問題は発生しない。買主にとって検査義務が重い場合には、検査義務を排除することが望ましい。開封しない状態で販売する商品の仕入れの場合は、検査義務をなくし、売主の出荷時の検査で検査が終了したものとすべきだ。
(2)片方の当事者が商人でない場合、請負契約の場合
この場合には、商法の規定は適用されない。上記のような問題は発生しない。但し、お互いの責任を明確にする趣旨から、納品時の検査をどのようにするか定めることが望ましい。
2.検査の内容の定め方
検査は厳重に行うことを定めればいいのではない。
買主からすれば、検査義務を負わない内容、簡略な検査でよいとする内容にすることが有利となる。例えば、検査に要する期間を余裕を持った期間にしたり、検査内容を簡略なものとしたりすることも考えられる。
逆に、売主からすれば、検査を厳重なものとし、速やかな検査を義務付ける方が有利となる。
3.まとめ
商人間の売買契約の場合、買主の検査義務は重いため、買主となる場合には、検査条件に気を付けて契約を結ぶ必要がある。