営業活動を業務委託する場合に、自社の名前を使わせて欲しいと言われることがある。
その場合、そのまま要望に従っていいものだろうか。注意点をまとめた。
1.社名を使わせた場合の責任
A社が自社の社名を名刺に使用することを業務委託先B社に許諾し、B社がA社の社名で取引をC社した場合を考えよう。
その場合、仮にB社が権限の範囲外でC社と取引をし、その取引相手C社がA社との取引であると誤認した場合、A社に対して取引上の債権の請求ができる(会社法9条、名板貸し責任)。相手が誤認した場合には責任を負うということだ。社名の使用を許諾した結果生じるリスクには上限がない点にも留意が必要だ。
<参考:会社法9条>
自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社が当該事業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。
業務委託先B社がA社から許諾された名刺を使用して、A社の名義で商品を購入し、その後行方不明となってしまい、商品発注先から、代金の支払を求められている、といった事態が生じたらまずい。
相手がよほど信頼できたとしても、リスクは残るため、他社に自社の社名を使わせることはすべきではない。
2.代替案
名刺に会社名を表示するのは、C社にとってA社との取引であると誤認する可能性があるため、リスクがある行為だ。
しかし、営業サイドとしては、どうしても営業の効果を挙げたいということで、A社の名前を何らかの形で表にしたいこともありうる。
その場合には、リスクを可能な限り縮小するために、A社販売店○○株式会社と記載し、連絡先には業務委託先の住所および電話番号を表示し、A社という文字は可能な限り小さくして、誤認されるリスクを軽減する必要がある。その際には、名刺の使用条件や管理についても書面を取ろう。
3.まとめ
自社の社名を第三者に使わせた場合、名板貸し責任が発生し、リスクが非常に大きくなるため、使わせるのはやめよう。どうしても何らかの形で使わせたい場合には、自社であると誤認しないよう表現に十分注意をする必要がある。