契約書の一番最後の部分には、契約書を何通作成し、誰が保有するかを記載する「後文」と、当事者の記名押印又は署名押印の欄を記載するのが通常だ。
その注意点についてまとめた。
1.後文を忘れないようにする。
後文とは、契約書の最後に「本契約書成立の証として本書2通を作成し、甲乙各一通を保有するものとする。」といった記載のことだ。この記載のように、
(1)契約書作成の手順
(2)作成部数
以上2点の記載があると、契約の成立の経緯が明らかになり、契約書が複数出てきても2回契約をしたわけではないということも明らかになるというメリットがある。後文を忘れないようにしよう。
2.印紙税の節税について
印紙税を節税するために、契約書を1通のみ作成し、もう1通は写し(コピー)のみとすることがある。このような取り扱いをしても、証拠としての効力は問題ないだろうか。写しのみの契約書を保管する当事者は、確かに契約成立の事実について立証が甘くなる。
しかし、実際には写しであっても、写しの過程に問題が生じるような特段の事情のない限り、原本と同様の証拠力があるといっていいだろう。
但し、契約書以外の背景事情を立証する材料が少ない契約類型(保証契約等)については、必ず原本を保管したほうがよい。
3.丸印と角印について
ハンコには、丸印と角印がある。丸印は、契約書への押印に使われるが、角印は請求書の押印に使用され、契約書に使用されることはあまりないのが通常だ。
法律上は、その会社が使用しているハンコであれば効力を生じるので、角印であっても有効だが、相手が契約書に角印を押してきた場合には、間違いではないか確認しよう。
4.実印と印鑑証明書について
実印とは、法人であれば法務局へ登録した印章(ハンコ)、個人であれば市役所に登録した印章(ハンコ)だ。実印の印影は、印鑑証明書にて確認することができる。
実印が押印してあれば、通常はそれを持ち出すことが困難であるため、本人が押印したという推測が通常のハンコよりも強く成り立つといえる。しかし、実際に本人が知らないところで押印されたものであれば、契約は効力を有さない点に注意が必要だ(勝手に契約した人は無権代理人としての責任を負う)。
5.署名と記名について
署名とは、サインのことで、記名とは予め印字した文字のことだ。
記名の例としては、
(1)ワープロソフトで契約書の当事者欄に○○株式会社代表取締役○○というように入力したり、
(2)ゴム印を押したりすること
がある。
法人であれば、記名押印が普通だが、個人であれば署名押印まで得ておくのが確実だ。署名であれば、筆跡の関係でも立証することができる。
海外に本拠地のある取引先の場合には、法人間の契約であっても、代表者のサインを求められるケースがある。担当者であれば、代表者の予定の確認等注意しよう。
6.印影について
当然のことだが、ハンコの印影は、念のためその会社を示すものであるか確認しよう。
7.製本について
契約書は通常A4で作成するが、2枚になる場合には、A3用紙1枚でまとめてしまうこともある。また、3枚以上の場合には、ホチキス止めした後、製本テープを貼り、その上から当事者が押印すれば、契約書が一体であり後からページを追加されたものでないことの証明となる。
8.まとめ
契約書の末尾には、後文を記載し、押印欄を作成する。印紙税の節税のために、原本を1通のみ作成することもある。ハンコには丸印、角印があり、署名と記名の違いにも注意する。