保証の意思を確認して書面を取得した場合でも、後で保証をした覚えはないと言われて拒否されることがある。
これが、例えば売買契約であれば、仕様について協議したとか、相手から発注書が出されているとか、たくさんの証拠が残っていて、相手が契約を否定することは難しい。
しかし、保証は書面にサインをしたという事実しか残らず、他の証拠が残らないので、契約を否定されることがよくある。相手が保証の意思を否定する場合、「自分は知らない」「誰かが勝手に署名押印したのではないか」といったもので、相手の意思を確実に証拠化する必要がある。
1.対処法
保証契約を結ぶ場合には、本人の意思確認を得た上で、それを証拠として残すことが重要だ。平成16年の民法改正により、保証契約は書面によらなければ無効となったが、書面という証拠だけでは確実性に不安が残るため、保証をした経緯も含めて証拠化しよう。
(1)必ず本人と面談したうえで、
(2)内容を説明し、
(3)その場で署名押印してもらい、
(4)その経緯について当日の天気や場所等の諸事情を記載した議事録を残したり、テープに取っておく
以上の対応をすることが確実だ。
そうすれば、もし相手が否認したとしても、言い逃れはなかなかできないだろう。ここまでの対処法をしなくても、請求できるケースは確かにあるかもしれないが、重要な取引についての保証であればあるほど、万全を期すことが重要だ。
実際に本人の意思確認がなければ、保証契約が無効となってしまうことがありうる。
第三者が本人に無断で本人に代わって署名押印して保証をした場合には、本人が別件で出した白紙委任状を流用し、それを信じてもやむを得なかった等、本人の取引上の責任がない限り、本人に請求することは難しい。同居の親族が勝手にハンコを持ち出した場合は、ハンコを厳重に管理するという義務はないため、本人の責任にはならない。
勝手に押印した当該第三者に対しては、無権代理人の責任を追及することができるに留まる。
2.書面の必要性
繰り返しになるが、平成16年の民法の改正により、書面によらない保証は効力が生じないことになった。書面がない保証契約は効力を有さない点に注意が必要だ。書面以外には、電磁的記録(メール等)でもよい。
3.身元保証書について
従業員が会社に損害を与えた場合に備えて取得する身元保証書については、通常の保証ほどの効力はない。「身元保証に関する法律」第5条により、損害賠償の範囲が制限されるからで、判例ではせいぜい損害の20~50%が認められる程度だということに注意しよう。なお、身元保証人に対して請求するには、従業員に対して請求する権利が存在している必要があるが、故意ではなく、過失による場合には、その金額も制限され、二重に制限される形になる。
4.連帯保証について
ここで、通常の保証と連帯保証の違いを説明する。
その違いは、
(1)催告の抗弁権(まず主債務者に請求するように言える)
(2)検索の抗弁権(主債務者に弁済の資力がある場合には、そちらから先に強制執行するように言える)
の有無だ。
連帯保証はこれらの抗弁権がないので、保証人は本人と同様の立場で返済しなければならず、弱い立場に立つことになる。
商法の規定により、主たる債務が商行為となる行為により生じたとき、または保証が商行為であるときは、保証人の債務は、特約がない限り連帯保証となる。
5.まとめ
保証を得る際には、本人の意思について、書面で残す必要があるほか、経緯についても証拠を確保しておくことが重要だ。