業務の委託を受けた側が、更に第三者に業務を再委託する場合がある。
その場合、そもそも契約書の定めなくそのようなことができるか問題となる。また、責任の所在についても注意が必要だ。
1.契約書の記載なく再委託ができるか
民法上、仕事の完成を目的とする請負の場合には、誰が完成しても問題ないので、仕事を請け負った側は再委託は可能とされている。
一方、仕事の完成を目的としない委任の場合には、委託相手だからこそ契約をしたと考えられるため、履行補助者として自己の手足として使用する場合でない限り、再委託は原則として相手の承諾がないとできない。(ここでは準委任契約も委任契約として解説する。)
しかし、請負と委任の区別は相対的で、境界事例がよくある。トラブル防止の観点から、業務の委託を受けた側が再委託をすることができるかどうか明記すべきだ。
委任契約と請負契約の区別については、下記も参考にしてほしい。
仕事をしただけでは報酬が発生しない?請負契約と委任契約の違い
2.責任の所在
委任契約であれば、再委託は禁止されているため、受任者としては、再委託について承諾を得る必要がある。そして、委任者が受任者に再委託をすることを許可した場合、受任者は再委託先が問題を起こしても、監督過失を負うに過ぎないこととされる可能性がある。この点、反対説があるが、リスクは残ることになる。
そこで、委任をする側としては、監督過失ではなく、再委託先の過失について受託者が責任を負うよう契約書に定めるべきだ。
請負契約であれば、再委託は禁止されていない。この場合、注文者から仕事を請け負った請負人は、再委託をすることができる。その際、特に再委託について許可も禁止も積極的にしていなければ、請負人は、再委託先が問題を起こした場合、監督過失だけでなく、再委託先の過失そのものについて責任を負う。
一方で、委託者が再委託について許可をした場合には、監督過失のみとされる可能性がある。この点、同様に反対説があるが、リスクは残ることになる。
請負契約では、再委託について許可をしたかどうかが不明確になりがちなこともあり、委託者側からすれば、再委託先の過失について責任を負う内容の条項を入れられれば、有利となる。
また、委託者側としては、契約を正しく履行できるかわからない当事者に再委託されることを防止するために、再委託の範囲を限定し、再委託する際には社名について事前の書面による承諾を必要とすることが考えられる。
3.個人情報の取り扱いについて
業務を委託する際に、個人情報の取り扱いをあわせて委託する場合には、別途秘密保持契約を締結する。そして、受託者が更に再委託先へ個人情報を業務の目的のために開示する必要がある場合には、その点についても再委託のケースと同様に責任の所在について規定しよう。
4.まとめ
業務の委託・受託においては、再委託が可能かどうか、受託者がどのような責任を負うかを必要に応じて明確にすべきだ。個人情報の取り扱いの再委託においても同様に注意する必要がある。