担保を取得する際には、実際に相手が経済的に立ち行かなくなった際に、担保を処分した場合、どの程度回収できるかが重要だ。
保証金であれば、担保の価値は動かないし、上場株式であれば、変動リスクあるものの、市場価格で売却して回収することができる。
今回は、特殊な例として、借地権付建物、敷金返還請求権について説明する。
1.借地権付建物の担保価値
建物を所有する目的で土地を借りていると、借り手は法律上強く保護されるため、地代を支払っている限り、立ち退く必要が生じるケースは例外的になる。その際に、賃料が相場よりも安ければ、「借り得」部分が生じる(定期借地権は比較的新しい制度であるため(平成4年から)、借り得部分が生じている契約関係はあまり存在しない)。
例えば、土地の価格の4%が相場だとして、2%相当額で借りているとすると、半値で借りていることになる。貸し手としては、当然のことながら、相場通りの賃料に値上げしたい。そして、借地借家法には、賃料の増額を請求できる条項がある。
しかし、実際にこの条項を使って賃料の増額を請求したとしても、賃料が相場通りとなることはほとんどない。なぜなら、相場賃料が契約当初と比べて上昇していたとしても、賃料相場の上昇について借り手が寄与した部分もあると判断され、半額程度の上昇に制限されてしまうことが多いからだ(継続賃料の差額配分法)。
借り手から見ると、安い賃料で借りる権利が残ることになる。これが「借り得」部分だ。この差額部分を土地についての一般的な運用利回りに、借地権ということで若干リスクを加味して低めに評価した価格が、借地権の経済的価値の基準となる。そうすると、相場賃料と比較して、現行賃料が多いか少ないかで、借地権の経済的価値も大きく変わってくることになる。
国税庁は借地権割合を定めているが、これは借地権の経済的価値を定める決定的な要因ではなく、あくまでも目安に過ぎない。相場賃料よりも高い条件が設定されている借地権について、わざわざ借地権価格を払ってまで買い取ろうとする人はいないだろう。
借地権を担保とする場合には、第三者へ売却して得られる金銭が問題となるが、第三者への譲渡には土地所有者の承諾が必要となる。承諾が得られない場合、裁判所に申し立てをすることができる。借地権価格(借地権の経済的価値とイコールではない)の10%程度を相手方に支払うという内容で、承諾に代わる許可が得られることが多い。
この承諾料を控除した金額に、建物の価値を足した金額が、借地権付建物の経済的価値ということになる。
2.敷金返還請求権の担保価値
敷金返還請求権とは、建物を借りる際に敷金・保証金の名目で支払った場合、建物を返せば返金を受けることができるが、その返金請求権のことだ。
例として、取引相手がテナントビルのオーナーに保証金300万円支払っていたとすれば、建物退去時に生じる300万円の返還請求権を、担保として取得することができる。その方法は、取引相手との間で担保設定についての契約を結び、取引相手がテナントビルのオーナーに確定日付のある通知(内容証明郵便等)で通知すればよい。
確定日付のある通知が必要なのは、優先権を確保する趣旨で、取引相手が他の取引先にも二重に担保設定していた場合、テナントオーナーに一番早く届いたものが優先する。
但し、敷金返還請求権は、賃料の未納もなく建物を返せば100%発生するが、賃料の未納があった場合、テナントオーナーが相殺してしまえば、担保価値は一気に減っていき、最後には消滅してしまう。
そうすると、敷金返還請求権は、不確実性の高い担保権であるということが分かる。もちろん、ないよりはあったほうが回収に資するが、あまり期待できるものではないという前提で与信管理をする必要がある。
3.まとめ
借地権付建物の評価は、国税庁の借地権価格に捉われることなく、売却した場合の相場を見極めながら担保評価をする。敷金返還請求権は、不確実性が高い担保であることを前提に与信管理をする。