・パソコンを購入したら動かなくなった。
・建築を依頼したら、仕様と異なる施工をされており、耐震強度が落ちてしまっていた。
・システム開発を依頼したら、業務で使用するのに使えないといえるほど表示が遅い。
契約後に問題が発生することはよくある。こうした問題は、法律では「瑕疵がある」という。契約の目的物が通常有する性能を有しない場合を有しないということだ。
瑕疵があれば、売主や請負人は、契約の種類に応じて、それを修理したり、損害を賠償するという責任を負うことが定められている。
1.瑕疵担保責任の期間
瑕疵担保責任を問う際には、期間の制限がある。一般には、保証期間ということで、特約が置かれることがほとんどだが、特約がない場合について解説する。
株式会社間の売買の場合、商法の規定が適用されて、検査しても発見できなかった瑕疵に限り、6か月以内に相手方に通知をすることが、権利行使の要件となっている。実質は6か月の期間ということになっている。
請負の場合は、商法に特別な規定はなく、民法上の規定が適用される。その期間は、原則として、引渡しから1年となる。建築物はこれよりも長くなる。
また、宅建業法や品確法には一定の瑕疵担保責任の期間を義務付ける強行規定があるので注意が必要だ。
強行規定(最低ラインを義務付ける法律上の規定)が特になければ、瑕疵担保責任の期間は特約の内容に従うことになる。保証期間が短ければ、売主が有利になるし、長ければ買主が有利になる。
細かい話だが、保証期間の起算日についての契約時の定め方として、納入時とすると売主が少し有利になり、検収時とすると、買主が少し有利となる。検収が完了するまで時間がかかるからだ。
2.何が瑕疵になるかという問題
瑕疵とは、通常有する性能を欠くこというが、お互いに合意した品質を欠くことも含まれる。
例えば、時計を買ったとして、時計の時間が1年に3分くらい狂ったとしても、通常はその程度の誤差は許容されていると言えるので、瑕疵とはならない。
特殊な用途の時計で、誤差が1年に1分以内の時計を買いたい場合にはどうすればよいか。そのようなときは、契約書の中で、スペックを定めてしまえばよい。1年の誤差は1分までとする、と契約書に書けば、それよりも誤差のある時計は、瑕疵があるということになる。瑕疵というのは、契約書に定めた内容によっても変わってくるためだ。
時計に限らず、精巧な部品であれば図面を添付して誤差はどのくらい許容できるのかも明記したり、契約の目的に応じて、要望事項を書面化すべきだ。
3.直送取引について
商品を仕入れて、そのまま他の事業者に販売し、目的物は転売先に直送する場合、間に入る業者は、瑕疵担保責任の期間の定め方について注意する必要がある。販売先から責任追及を受けた際に、仕入元に請求できない可能性が生じるケースがあるからだ。
仕入元に請求できる期間よりも販売先から請求を受ける期間の方を同等か短くするように注意しよう。
この点は、こちらの記事も参照してほしい。
直送取引の場合の仕入先と販売先との契約条件の差異をどうするか
4.瑕疵担保責任を負わない特約について
瑕疵担保責任を負いたくない場合、「瑕疵担保責任を負わない」とする特約も効力がある。特に、中古の商品は瑕疵担保責任を負わない特約がされることも多い。
しかし、知っていて告げなかった瑕疵は法律上免責されないことになっている。そのような場合に免責を認めるのは不当だからだ。
このことは、逆の立場で、瑕疵担保責任を問えないという条件で買ってしまった場合に意味を持つ。瑕疵があったとしても、相手がその瑕疵を知っていれば責任を問えるからだ。責任を追及する際には、売主が瑕疵を知っていた事情や、知っていて当然であったという事情を集めることになる。
瑕疵担保責任を負わない特約の一種として、瑕疵担保責任を負わない代わりに、売り手が商品の数を一定数割増しで提供するという形での取引もある。予め代品を用意しているのと同じことになる。
買い手にとって注意すべき点としては、単発の取引ではこのような契約は結ぶべきではない。瑕疵が多発する可能性があるからだ。継続的な取引であれば、最初に少量を購入することで、テストをしていくことができる。いずれにしても、不良品の割合がある程度分かっている場合に限り許容すべきであろう。
5.まとめ
瑕疵担保責任の「瑕疵」とは、通常有する性能を欠くことのほか、予め合意した性能を有しないことも含まれる。瑕疵担保責任の期間は、契約に定める期間となるが、強行規定に注意が必要だ。瑕疵担保責任を負わない特約も有効だが、相手が知っていて告げなかった瑕疵は責任を追及することができる。